わかやま新報女性面 (隔週金曜日)記事を発信-NPO法人「和歌山コミュニティ情報研究所」の女性スタッフが取材・編集を担当


by mako0491

 12日掲載 交差点

交差点

自分のものさしを持つ

 神戸に私のお気に入りのフレンチレストランがあります。そうそう気軽に行けるお値段でもありませんので、私にとっては、たまのご褒美の場所です。

先日、そのレストランで食事した際、とても工夫を凝らした前菜に感動して、その前菜を作ったシェフと話しをすることができました。見るからに若い好青年で、聞けば26歳とのこと。

この若さで、前菜を任されて、しかも大枚をはたいた客の期待を裏切ることのない見事な創作に、本場のフランスで修業を積んだような経歴の持ち主かと思ったら、意外にも、ご家庭の事情で、中卒で働きながら調理師学校に行き、そこで一通りの勉強をするなかでフランス料理に魅了されたらしく、一度もフランスには行ったことがないということでした。

 最近では、高校はもちろん、大学ですら当然のように何となく進学する時代なだけに、このシェフのような若者に出会えたことがとても新鮮でした。

シェフは基本的に客とは接しないため、自分の作った料理に対する客の反応を直接的に知ることはあまりなく、返ってきた皿を見たり、ホールのスタッフに様子を教えてもらったりして、自分の提供した料理がどうだったのかを確認しているそうです。

このレストランでは、1ヵ月半ごとにメニューが替わるのですが、前菜を担当する彼は、常に新たなメニューを考え、試作を重ね、仕上げていくことに全力を注いでいるのです。それは決して自己満足ではなく、美味しい料理で客を幸せにすることに真剣に向き合っている、まさにプロフェッショナルです。

 私たちはとかく格付けに頼りがちです。留学をして箔をつけるように、学歴や経歴が重視されますが、それだけがものさしになるのではなく、彼の料理のように、人に感動と喜びを与えられることそのものが一つのものさしであってもいいのではないかと思います。 

世の中の多くの人が、そんな自分のものさしをきちんと持つことができれば、もう少し気楽に、そして豊かに、生きやすくなるのではないでしょうか。

(石井 敦子)


by mako0491 | 2018-10-16 14:57 | ヒト交差点