わかやま新報女性面 (隔週金曜日)記事を発信-NPO法人「和歌山コミュニティ情報研究所」の女性スタッフが取材・編集を担当


by mako0491

9.14あたま 小さな命を守り育てる社会の力


低出生体重児の治療とケア

広く社会の視点から考えていく

      

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      和歌山医大で講義など

 日本が世界一を誇れるもの、それは「赤ちゃんが最も安全に生まれる国」であることです。生後4週間未満の新生児死亡率は1000人あたり0.9人で世界一です。日本は、新生児死亡率を大きく左右する低出生体重児の死亡率が低く、現在では体重1000グラムに満たない赤ちゃんもほぼ救命できる時代となっています。

(石井 敦子)

筆者が講師を務める和歌山県立医科大学保健看護学部では、9月9日に高校生を対象とした「体感しよう!小さく生まれた子どもの命を救う・癒す・育てるケアの力―2018」が開催されました。早産などにより、体重1000グラム未満で生まれた赤ちゃんを超低出生体重児といいます。そのような小さく生まれた赤ちゃんは、外の世界に出る準備の途中で生まれるため、呼吸する力や体温調節する機能が未熟で、NICUという新生児集中治療室で治療やケアを受けることがほとんどです。

お母さんの体験談

今回の講座では、超低出生体重児の治療やケアの講義、NICUの模擬体験に加え、超低出生体重児で生まれ、現在は20歳に成長したお子さんを育てたお母さんの体験談を聴かせてもらいました。

自分の手のひらにおさまるほどに小さなわが子を産んだ時の自責の念、さまざまな不安を抱えながらNICUで子育てする日々を支えてくれた看護師への思いなど、母親の立場で語ってくださいました。

赤ちゃんの身体が小さすぎて、新生児用の肌着やオムツは付けられず、オムツの代わりに生理用ナプキンをあてられていたのを見て「こんな小さな子が産まれてくることを社会は想定していません」といわれているような気持ちになったそうです。20年前の悲しい現実ですが、そのような母親たちの声から、現在では、オムツメーカーで可愛い絵がプリントされた超低出生体重児用の小さなオムツも製品として作られるようになりました。

小さな肌着も

このお母さんは小さく生まれた赤ちゃんにも可愛い肌着を着せることができるように、新生児用肌着よりも小さいサイズの低出生体重児肌着を作り、13年前からオンラインショップを立ち上げて販売しているそうです。点滴していても安全に着衣着脱できる肌着がほしいという看護師さんの声から考案された点滴用肌着も全国のNICUで使われています。海外では、このような小さな赤ちゃん用肌着もプリミーサイズとして百貨店などどこでも買うことができますが、日本ではまだまだそのような環境が整っていないのが現状です。

 

新たな母子健康手帳も

最近、ようやく各自治体では低出生体重児向けの母子健康手帳を作る動きが出てきています。生まれた時からの成長発達の記録として大切な母子健康手帳ですが、体重は1000グラムからしか書き込めません。それこそ、社会に受け入れられていないと感じてしまいます。低出生体重児向けの母子健康手帳の目盛りはゼロから作られ、その子に合わせた成長発達の時期に記入できるようになっています。そんな些細なことも、子育てする母親にとっては精神的な支えとなり、小さく生まれた子どもが大きく育つ力になっていくのではないでしょうか。

最先端の研究に触れる

この講座は、独立行政法人日本学術振興会の「ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~」というプログラムで、最先端の研究を直に見る、聞く、触れることで、科学の面白さを感じてもらい、将来を担う小中高生の心の豊かさと知的創造性を育むことを目的にしたものです。

科学技術はサイエンスとヒューマニズムで豊かな社会をつくるためにあるものです。超低出生体重児の命が救える時代を生きる若い世代が、その大切な命を育むためにできることを広く社会の視点から考えていくきっかけになることを期待しています。


by mako0491 | 2018-09-14 11:06 | アタマ記事