わかやま新報女性面 (隔週金曜日)記事を発信-NPO法人「和歌山コミュニティ情報研究所」の女性スタッフが取材・編集を担当


by mako0491

熊野で紙漉き体験

1・9日掲載

明治から昭和30年ごろまで盛ん

大社近くの工房で、音無紙作る

 昨年、「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」がユネスコの無形文化遺産に登録された。三つの地域の和紙技術である。原料に「楮(こうぞ)」のみが使用され、流し漉(す)きである。熊野地方でも明治から昭和30年ごろまで紙漉きが盛んに行われていた。本宮町、那智勝浦町、三重県紀和町花井などである。今回、熊野本宮大社近くの工房で和紙(音無紙)を作る方法、紙漉きを体験した。その内容をレポートする。
(玉置 ひとみ)

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*10年前に復興
 私は日本の伝統の折形(おりかた)という紙を折って物を包む礼儀作法を嗜(たしな)み、教えてもいる。折形については機会があれば紹介するとして、折形をする上で紙を漉いてみたいという願いを長年抱いていた。

 熊野エリアでは昭和30年代ころまで続いていた紙漉きも、洋紙やパルプの大量生産によって一旦はその手法は途絶えたが、10年ほど前に本宮町小津河(こつが)で復興され、現在も熊野本宮大社の護符「牛王神符」の用紙が手漉きされている。

*工房、日曜に予約なしで
 昨年、熊野本宮大社の門前町に大社周辺の事業者でつくる「本宮街づくり協議会」と「NPO熊野本宮」の皆さんによって体験工房『おとなし』がオープンした。

 日曜日午前9時30分~16時まで予約不要で、1000円で紙漉きが体験できる。体験時間は20分くらいで、工房のスタッフが丁寧に教えてくれるので、初めてでも満足のいく紙が漉ける。

 私も日曜日に体験したが、これ以前に、平日、音無紙を見てみたいという欲求にかられ、本宮観光協会へ問い合わせをした。「それならNPO熊野本宮さんで聞いてください」とアポイントを取ってくれ、その日の内に関係者の方に会うことができた。さらに、平日閉まっている工房でも作業をしているということで案内していただき、話を聞くことができた。

*原料の栽培も
 大社に納めている護符の紙は、三椏(みつまた)とトロロアオイが主な原料で作られている。どちらも大社周辺の山で自生している物を使い、現在は栽培にも取り組んでいる。三椏を伐り、蒸して、皮を剥いで・・・と一連の紙漉きの作業から行っている。 

 材料だけ取り寄せてということではなく、すべて本宮産でできている。工房の女性から紙漉きだけをやっているのではないという話に、和紙に対する造詣の深さと崇高な理念を感じた。

 音無紙を買いたい。という私の無理なお願いに、快く「製品にできなくて撥(は)ねた物しかありませんが、それでよろしければお持ちください」と数枚を持たせてくれた。手にとった瞬間に和紙が生きていると感じた。それは彼女の紙を慈しむ思いが私にも伝わってきたからなのだろう。

e0171960_12284916.jpg*漉いた紙に御朱印
 紙漉きの話だけを聞く予定だったが、やはり自分でも体験してみたくなり、またその週末に足を運んだ。彼女が漉いた紙とは比べものにならないが、それなりに満足のいくものができた。

 体験を終えて、紙漉きは身が引き締まるし、自分の心の現在地を知ることができた。本宮へ旅をされた時の思い出としてお薦めしたい。漉いた紙を本宮大社へ持っていくと300円で御朱印をいただくことができるのも魅力だと思う。自分のための旅の思い出になるのではと感じた。

<文化遺産に登録された3つの和紙>
 今回登録されたのは、「石州半紙(せきしゅうばんし)」(島根県浜田市)と「本美濃紙(ほんみのし)」(岐阜県美濃市)、「細川紙(ほそかわし)」(埼玉県小川町、東秩父村)の3つの和紙。
楮(こうぞ)は光沢があり、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)に比べると繊維が長いため、美しい和紙を漉くことができる。

 なお三重県紀和町の花井紙は江戸中期の百科辞典『和漢三才図会』の「紙衣(かみこ)」の項に「奥州白石、駿州ノ阿部川、紀伊ノ華井(ケイ)、摂州大坂、之ヲ出、華井ノ紙衣特ニ佳シ…」と記されていることもあり、紙子が幕府でも珍重されていたという記録も残っている。
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by mako0491 | 2015-01-06 12:38 | アタマ記事