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わかやま新報女性面 (月一回金曜日)記事を発信-NPO法人「和歌山コミュニティ情報研究所」の女性スタッフが取材・編集を担当


by mako0491

なでしこサッカー、環境改善待ったなし     <下>


 中学生世代の育成に重点

 各自治体の協力もカギ


 前号の最後の部分で、女子プロサッカー選手について触れた。現在、日本人で「女子プロサッカー選手」と呼ばれる選手はほんの一握りである。現在、サッカー子供や若い世代にとっても、「女子プロサッカー選手」という職業があることはとても良い刺激になる。ただ、プロとはそんなに甘くないのが現実だろう。自分のプレーを楽しみにしてくれる人たちがいること、実際にその人たちを満足させることが大前提の世界である。実に厳しい。そこで、今回は前回と同様、現在、ジェフユナイテッド市原レディースU15のコーチを務める小林美由紀さんに話を伺い、企業スポンサーによる協力やサッカー人口の拡大がどのように今後のサッカー環境の改善、さらに日本女子サッカーの将来に繋がるかについて考える。          (竹内あずさ)



 企業スポンサー
 W杯以来、多くの企業がなでしこに注目し始め、9月16日には日本女子サッカーリーグが三井住友カードとオフィシャルスポンサー契約を結んだと発表(一年半契約で年間推定金額は1000万円)。これで協賛企業はプレナスに続いて2社目となった。
 また、各地のクラブチームと企業のスポンサー契約も進んでいる。そのうち、代表でMFの宮間選手やGKの福元選手らが所属する岡山湯郷ベルは9月14日、同県鏡野町にある「山田養蜂場」とメーンスポンサー契約を結んだ。
 お金のないリーグやクラブチームにとってこのような企業の協力はただただ今は有難い。様々な構想も膨らむ。

 今後、このような地域企業が条件の良い働き口を選手達に紹介してもらえるような協力があればサッカー環境の改善に繋がるのではないだろうか、と小林さんは指摘。

 選手達の中には自分で探したアルバイトやパートで生計を立てながらサッカーを続ける者もいる。仕事とサッカーを上手く両立できる環境が少しでも改善されれば、選手達の心の余裕になるに違いない。それによって、サッカーと長く関れる選手も増えるのではないだろうか。

 目標:女子サッカー人口30万人
 日本サッカー協会は、現在4・6万人の女子サッカー人口を2015年までに30万人に拡大するなでしこビジョンを掲げているが、その数字を達成するには、まず、日本のスポーツ人口が増えなければ厳しいと小林さんは言う。 

 アメリカの女子サッカー人口は167万人と言われている。アメリカは日本に比べてスポーツ人口が多いだけでなく、シーズンスポーツを楽しむ文化がある。例えば、夏はサッカー、冬はバスケットボールといったように1年を通して2つの競技に親しむのはごく普通。

 学校のクラブ活動や地域のクラブチームのコーチとして結構良いお金が稼げる点も日本と異なる。人口拡大の為の取組として、日本サッカー協会は現在、中学生年代の女子選手の活動場を増やすことに重点をおいている。

 これまでの傾向では小学生まで男子に混ざってサッカーをしていた女子が中学校に進学するとサッカーを続けられなくなることが多く、そんな女子選手がサッカーを続けられる受け皿が必要だと見ている。 

 現在、小林さんはジェフユナイテッドレディースのU15のコーチをしているが、選手達は週に5日間の練習で7500円の月謝を払う。塾などと比べると月謝は比較的安いが、遠方から来ている選手は交通費だけでも月に2、3万はかかってしまうこともあると言う。当然親の負担は大きい。もっと多くの中学校が女子サッカー部を持てたら良いのだが中学校の部活動で11人以上の女子を集めるのはかなり困難なのが現状である。

 高校の部活動もバレー部やバスケット部に比べてサッカー部がある高校は少ない。筆者自身、地元愛媛県の高校でサッカーを始めたが、当時、県大会出場は4校。現在も5校と、さほど変化はない。和歌山県に関しては中高で女子サッカー部を持つ学校はない。そんな中、2012年度から女子サッカーがインターハイ(高校総体)の正式種目に決まったことは喜ばしいニュースである。

 また、女子サッカーの認知度を高める為の取組として、日本女子サッカーリーグは今後、普段リーグに馴染みのない地域でも試合が行えるようにする方針。

 現在なでしこリーグに加盟の9チームの本拠地は8都県。その地域以外で開催するには遠征費や会場費の問題があったが、早くも10月1日に実現へ。INAC神戸とアルビレックス新潟の試合が福井で行われることとなり、その成果が楽しみである。

 例えば、和歌山も全国で見ると、女子サッカー人口がとても少ない地域の一つ(サッカー協会の統計によると、2010年の選手登録数は220名、そのうち小学生が半数を占める。現在、登録チーム数は4チーム)。このような地域で、なでしこリーグの試合を行うことは果たして効果があるのだろうか。それに関しては、各自治体との協力が重要だと小林さんは言う。
 各都道府県にサッカー協会は存在する。せっかく行う試合をどう宣伝し、お互いがどう利益を得るのかじっくり考えなければならない。

 女子サッカーに触れたことのない人達に見てもらい、女子サッカー人気や、リーグの知名度を上げることができればそれは大きな成果である。しかし、試合を見て、サッカーを始めたいと思っても、すぐに始められる環境があるかどうかはまた別の問題である。
 さらに、W杯以来、テレビでもよく取り上げられる代表選手や彼女らの所属チームとその他の選手やチームとでは知名度の違いが大きく、効果の差も出てしまうのではないかいう懸念もある。


 今後の課題
 今後の日本女子サッカー発展には、これまでと同様、目標高く、辛抱強い努力が必要である。このブームをただのブームで終わらせない為の大きな武器は、「代表がロンドン五輪で再び金メダルを獲ること」であることは明らかであり、女子サッカー関係者の誰もが考えていることだろう。そして、大切なのは「関わること」ではないだろうか。選手、サポーター、コーチ、選手を支える親、どんな形であれ、関わっていることには変わりない。

 小林さん自身、これからも女子サッカーに関わり続けていくことには変わりないと言う。ただ、今はJリーグの下部組織で比較的エリートに近い選手達のコーチをしているが、裾野を広げるような役割、底辺での指導の重要性も感じていると語ってくれた。
by mako0491 | 2012-06-01 17:12 | アタマ記事