人気ブログランキング | 話題のタグを見る

わかやま新報女性面 (月一回金曜日)記事を発信-NPO法人「和歌山コミュニティ情報研究所」の女性スタッフが取材・編集を担当


by mako0491


2.17
音の魅力
写真付き
ベートーベンの「春」
 私がまだ髪の毛の美しい20才の学生だったころ、涼風のなかを小走りに、ある要件のため某大学の付属中学校の講堂へ行った。ひんやりとした手触りの重い扉を全力で開いた、その瞬間 恐怖にも似た感動が全身に走った。
薄暗い室内の奥で、ベートーベンの作品24番バイオリン・ソナタ「春」を演奏している二人がいた。私はその場に足が釘付けになり、しばらく異次元の世界にいた。
音楽は私を深い森の神秘な世界へ誘ってくれる。なぜだろう。
若かった母がよく歌っていた「赤とんぼ」、「ペチカ」、「故郷」などを思い出していた。
近くの大きな川で幼な友達と終日泳いで遊んでいて分かった、 たえまない水の音の柔らかさと身の危険を知らせる急流の音。
田んぼで三角形に束ねられた麦わらの長いトンネルの中を夢中で駆け抜けて、スピードの中にこだまする音を知った。
赤く燃えるかまどの前で、はじける薪の音と米粒がご飯へと変化する音とのせめぎあいに耳を集中させた温かさと緊張感。
夕餉の後片付けをする冷たい水の中で3拍子のリズムで食器を洗い、頭に磨いたばかりの鍋をかぶって歌うとよく反響して美しい音に変化することも知った。
ベートーベンは高校生の時初めて聞いた。彼は自然をこよなく愛し、生涯女性に憧れ続けた人である。音楽は「楽しい音と書くが、音楽作品は理念が詩情に化学変化したものだと思う。
 4~5才の女の子は決まって“ねえ、「エリーゼのために」 を弾いて”という、世界で最も有名なピアノ音楽である。「月光ソナタ」を聞きながら耳が聞こえなかったベートーベンの崇高さを思う。
                              (山下はるみ)
by mako0491 | 2012-02-16 18:20 | 音の魅力・魔力