庄司彩矢香とベートーベン
2012年 02月 16日
1月7日付け
音の魅力
庄司紗矢香と
ベートーベン
春の夕暮れ、ラジオから流れるバイオリンの不思議な音に魅せられた。奏者は庄司紗矢香(写真)と告げた。こころを躍らせて彼女のチケットを1枚手にいれた。
その日 晩秋の闇の中で、噴水が散っていく音を聞きながら、冷たいコンクリートの壁にもたれて開場をまった。
彼女はピンク色のドレスを着、飄々としてピアノ伴奏のジャンルカ・カシオーリと出てきた。共に若い30才と31才のコンビ。曲目はバイオリン協奏曲 第2、8、9番、全てベートーベンというのも面白い。
シャンデリアが照らすホールの光と音が沈むと最初にピアノの美しい音が私の心に響いた。呼応してバイオリンが、微かな柔らかい音をだした時 はっとした。なんと静かな音、ベートーベンの音としては聞いたことがない。そう思った瞬間身体が前のめりになっていた。夢中で聞いた。途中バイオリンとピアノが少しリズムがずれるように聴こえる。それも全曲にわたって時々聴こえる。
これは創造の瞬間!なのだ。私は神経を集中させた。リズムが合わないのではなく、二人の心が未知の世界へ入っているのだ。それぞれの音を探っているのだ。
「創造とは自分の道をトコトコと一人で歩くこと、頑張らないで自分を信じて惚れること、上手な人は上手に、中ぐらいの人は中ぐらいに、下手な人は下手なりに」とは私の絵の師である元永定正氏の言葉である。
自分の内部を見つめることによって、心は揺れたり孤独を感じたりして深くなっていく。
音が心から湧き出るようで爽やかであった。しかも音楽の王、ベートーベンが進化していた。
あの弱音の美しさ、闇の中にふっと希望を見つけたような、ひとの心を震わせるものがあった。
(山下はるみ)
by mako0491
| 2012-02-16 18:13
| 音の魅力・魔力