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わかやま新報女性面 (月一回金曜日)記事を発信-NPO法人「和歌山コミュニティ情報研究所」の女性スタッフが取材・編集を担当


by mako0491

庄司彩矢香とベートーベン


1月7日付け
音の魅力
庄司紗矢香と
ベートーベン

 春の夕暮れ、ラジオから流れるバイオリンの不思議な音に魅せられた。奏者は庄司紗矢香(写真)と告げた。こころを躍らせて彼女のチケットを1枚手にいれた。

 その日 晩秋の闇の中で、噴水が散っていく音を聞きながら、冷たいコンクリートの壁にもたれて開場をまった。
 彼女はピンク色のドレスを着、飄々としてピアノ伴奏のジャンルカ・カシオーリと出てきた。共に若い30才と31才のコンビ。曲目はバイオリン協奏曲 第2、8、9番、全てベートーベンというのも面白い。

 シャンデリアが照らすホールの光と音が沈むと最初にピアノの美しい音が私の心に響いた。呼応してバイオリンが、微かな柔らかい音をだした時 はっとした。なんと静かな音、ベートーベンの音としては聞いたことがない。そう思った瞬間身体が前のめりになっていた。夢中で聞いた。途中バイオリンとピアノが少しリズムがずれるように聴こえる。それも全曲にわたって時々聴こえる。

 これは創造の瞬間!なのだ。私は神経を集中させた。リズムが合わないのではなく、二人の心が未知の世界へ入っているのだ。それぞれの音を探っているのだ。

 「創造とは自分の道をトコトコと一人で歩くこと、頑張らないで自分を信じて惚れること、上手な人は上手に、中ぐらいの人は中ぐらいに、下手な人は下手なりに」とは私の絵の師である元永定正氏の言葉である。
 
 自分の内部を見つめることによって、心は揺れたり孤独を感じたりして深くなっていく。

 音が心から湧き出るようで爽やかであった。しかも音楽の王、ベートーベンが進化していた。
あの弱音の美しさ、闇の中にふっと希望を見つけたような、ひとの心を震わせるものがあった。

                                                 (山下はるみ)
by mako0491 | 2012-02-16 18:13 | 音の魅力・魔力