人気ブログランキング | 話題のタグを見る

わかやま新報女性面 (月一回金曜日)記事を発信-NPO法人「和歌山コミュニティ情報研究所」の女性スタッフが取材・編集を担当


by mako0491

最愛の母を見送ってー視点・論点


 母が亡くなって早いもので7年が過ぎた。
 当時母は83歳。風邪を引き一週間入院したことがきっかけで、全く歩けなくなってしまった。3ヶ月が経ち、毎日のリハビリでなんとか10歩ほど歩けるまでになった。その時の母の、うれしそうな顔を今でも私は忘れない。老人病棟のある病院への転院を勧められ、母はあと2ヶ月ほどリハビリをすれば一人で歩けるようになると信じ転院を決めた。

 転院1日目、介助なしで用を足せない患者は、強制的にオムツ対応になると聞かされた。どうしても受け入れられない母は、抵抗をしてヘルパーさんにとても叱られた。
 次の日、あれほど前向きで、リハビリも頑張っていた母が、別人のように、力なくベッドに横たわっていた。
 その時私は、いつ人間が尊厳を無くし、生きる気力を無くしてしまうかを知った。

 そして3日目、母は重病患者の入る部屋に移されていた。私は、その病院に転院させた自分を責め、病院や強引なヘルパーさんを恨み、朝から晩まで病院に通い詰めた。
 一進一退を繰り返し、半年後に母は亡くなった。

 時が経ち、今ようやく冷静に考えることができるようになった。
 介護は多くの問題をかかえ、いろんな立場の人が悩み苦しんでいる。最近では、頑張りすぎるヘルパーさんが心身症になるケースがあり、専門のカウンセラーもおられると知った。
 介護する人は一人で抱え込まないで、もっとSОSを出していいと思う。また、介護される人は、オムツ生活になっても、生きる希望を失わず、一人でも自分に手を貸してくれる人がいるなら幸せと思って欲しい。
そして私も、いつか訪れる終末をそんな風に考え、送れたらと切に思っている。
            
                          (井口 多恵子)
by mako0491 | 2009-08-24 21:34 | 女の視点