わかやま新報女性面 (隔週金曜日)記事を発信-NPO法人「和歌山コミュニティ情報研究所」の女性スタッフが取材・編集を担当


by mako0491

カテゴリ:名品発掘( 9 )

7.24日掲載
曽野綾子著 (中央公論社と中公文庫から出版)。
 何かと論議を醸す曽野綾子。エッセイや論評が多い中、こんな小説を著していました。フランスのルルドについても教えられます。

  シンガポールに暮らす亜季子は、浮気を重ねる夫との生活に嫌気がさし、離婚を決意。日本に帰り実家近く、三浦半島の海辺に住む画家有島との幸福な生活に臨む。  

 ある日、前夫が爆発事故のせいで大火傷を負ったとの知らせが届く。別れた自分には何の関係もないし義務もない、これ以上関わりを持ちたくないと思っていた。

 が、商用でシンガポールに戻った時、失明し片方の耳が聞こえず、全身に大やけどを負った変わり果てた穂積を見る。元妻というしがらみはない。ただ人間として彼を放っておくことがためらわれた。

 そんななか、フランスのルルドという所に病を治す奇跡の泉があり、そこに行くことを切望する穂積に渋々同行する。

 ルルドから戻った亜季子に、有馬が言う―自分たちはこのまま穂積を忘れて二人で生きていくこともできる。でもそうするとあなたが、死ぬときに後悔するかもしれない。もし穂積を見放さず面倒をみることを選択したら、やりたい事じゃなくてやるべき事をやった、ということになる―

 そして亜季子の取った行動は・・・

 「ある復讐」とは?文中にパウロの言葉が出てきます。「自分では復讐せず、神の怒りに任せなさい。『(復讐はわたしのすること、わたしが報復する)と主は言われる』と書いてあります。『あなたの敵が飢えていたら食べさせ、渇いていたら飲ませよ。そうすれば、燃える炭火を彼の頭に積むことになる。』悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい」。

  一見、身勝手な人間だけが得をしているようにも感じられ、読む人の経験とか立場によって解釈が分かれる本です。

 理想的に生きたい、と思っていても、なかなかそうはいかず、キリストの言う「汝の敵を愛せよ」の実践って難しすぎません?
                         (中村 聖代)
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by mako0491 | 2015-08-02 16:22 | 名品発掘
4・17 掲載
 男を翻弄する悪女、いや聖女? 

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 作家 有吉佐和子は、紀州を舞台にした年代記『紀ノ川』『有田川』『日高川』の三部作、『華岡青洲の妻』など多彩な作品群で知られています。でも『悪女について』を読んだ人はそれほど多くないのでは。

 新潮文庫には、
《自殺か、他殺か、虚飾の女王、謎の死》――醜聞(スキャンダル)にまみれて謎の死を遂げた美貌の女実業家富小路公子。彼女に関わった27人の男女へのインタビューで浮び上がってきたのは、騙(だま)された男たちにもそれと気付かれぬ、恐ろしくも奇想天外な女の悪の愉しみ方だったーー。
というキャッチコピーにひかれて読み始めました。

 最近の大手出版社のネット上のサイトの充実ぶりには驚かされます。

 細かい筋書きは、読んでもらうとして、印象に残ったのはオトコが平凡で、強烈な個性を感じさせる相手役ががいなかったことでしょうか。

 もう一つは悪女と聖女を併せ持つのが母親。そこにひかれる子供っぽさの抜けきれぬ男たち。だから男社会を逆手にとり、しかも女の魅力を完璧に発揮して男たちを翻弄(ほんろう)しながら生きられたわけでしょう。面白いが、ちょっと長いかなと言う読後感も持ちました。

 郷土の誇りでもある有吉さん、53歳の若さで亡くなっていますが、調べてみると色んな興味深いことがわかってきました。  

 中国との縁が深く、国交回復前からも訪れ、天主教(中国におけるカトリックを指す)調査のため半年滞在して『有吉佐和子の中国レポート』を執筆しています。

 まだまだ読んでない小説が多くあります。次は『芝桜』『開幕ベルは華やかに』に挑戦したいと思っています。
                                        (水上 真琴)
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by mako0491 | 2015-04-19 12:23 | 名品発掘

9.12掲載

「嫌われ松子の一生」

超アナログの生き方に共感

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そもそも「中谷美紀」という女優は好きではありませんでした。なんとなく虫が好かないーそんな感じでしたが、彼女の出演する映画を観るうち、考えが変わりました。

まず、「阪急電車 片道15分の奇跡 (2011)」。これは元勤務していた会社の店舗や社員が画面に出てきたり、阪急今津線にかすかな思い出があったりしたので面白く観ることができました。

中谷美紀演じるOLは純白のドレスを着て元恋人と寝とられた後輩の結婚式に出席、その姿のまま引出物を持って電車に乗ります。 

そうした情景がまずありえないし、他にも細かい点が気になりましたが、宮本信子の演じる「おせっかいおばさん」的な人物が多様なエピソードで画面を引き立てます。

次に観る機会があったのが、「嫌われ松子の一生 (2006)」。壮絶で不幸な日々を過ごしながらもハッピーな人生を目指して奮闘する川尻松子のお話。教師からソープ嬢、殺人まで犯してしまう転落人生を送る松子の悲哀を中谷美紀が演じています。

この作品で彼女は第30回日本アカデミー賞、 主演女優賞を受賞しました。計算高い現代人にはない超アナログ的な松子の生き方は、「嫌われ」るどころか、愛すべき人物として、瑛太演ずる甥に、さらに唯一の女性の親友に、それに何よりも私たちに迫ってきます。
 
 みそびれてしまったのが「ゼロの焦点 (2009)」。松本清張原作のサスペンス。 
失踪した夫の行方を求めて金沢へ旅立つ新妻に広末涼子。事件の鍵を握る二人の女性、社長夫人に中谷美紀、受付嬢に木村多江。

 『主演ではない中谷の演技が素晴らしかった。すさまじい演技に息を呑んだ』という感想がありました。是非観てみたい映画です。

(中村 聖代)
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by mako0491 | 2014-09-10 12:53 | 名品発掘

包帯クラブ


5.9掲載
 
 傷ついた場所に包帯を巻く



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『包帯クラブ』(2007年)、これはまさに名品です。お勧めですよ。その年のブルーリボン賞では作品として邦画ベストテン入りし、堤幸彦は監督賞候補に。

主演は柳楽優弥と、石原さとみ。柳楽は下手な関西弁で傷を負った少年を大げさに演じ、しかし何か抱えていることを感じさせてくれ、ワラを演じた石原のコンビも絶妙です。

大雑把な筋書きを紹介しましょう。
ワラは両親の離婚がきっかけで投げやりな生活を送っていたが、病院の屋上でディノと出会う。ディノは少し変わった男の子で、傷そのものに包帯を巻くのではなく、傷ついた場所に巻くというアイデアを披露する。たとえばフェンスで手に怪我をした場合、手ではなくフェンスに包帯を巻く。

その場ではつっけんどんな態度で去ったワラだったが、傷ついた友達をなぐさめようと同じように傷ついた場所に包帯を巻くと「すっごくいいよ!」と言われ、気づけばディノも加わって「包帯クラブ」を結成することになった。

包帯クラブを結成した彼らはWEBサイトを立ち上げ、誰かの傷ついた出来事とその場所を投稿してもらい、その空間を包帯というモチーフで切り取っていく。

 誰かの癒しになる──自覚はあるものの次第にその活動は彼ら自身の過去の傷をあぶり出す行為にもなってゆくーー。

ロケ地は群馬県高崎市。実は筆者が中・高校時代を過ごした思い出の多い地です。
様々なシーンが青春時代と重なり、甘酸っぱい気分に浸れるのも郷里が映画のロケ地になればこそでしょうか。

                                        (水上 真琴)
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by mako0491 | 2014-05-12 23:30 | 名品発掘
コラム 名品発掘


海を舞台に「メッセージ・イン・ア・ボトル」


e0171960_3425991.jpg  海が好きで、時間があればあちこちの海岸を歩く。最近は加太の海をこよなく愛する一人だ。 
 加太は和歌山市の西端にあり、万葉の時代から、潟見の浦と詠まれていた景勝地で、紀淡海峡に面して美しい海岸線が続いている。

そんな加太の海を連想させる、ノースカロライナの辺鄙な海でのロマンを紡ぐのがアメリカ映画の「メッセージ・イン・ア・ボトル(1999)」


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シカゴの新聞社で調査員として働くテリーサ(ロビン・ライト・ペン=写真上)は、休暇中の海岸でビン入りの手紙を拾う。そこに書かれていたのは、いまは亡き妻に贈られた愛のメッセージ。

さまざまな手がかりからビンを流したと思われる男性をつきとめたテリーサは、彼ギャレット(ケビン・コスナー=写真下)を訪ねてノースカロライナの家へ。

手紙を見て来たことを切り出せないまま、ギャレットと愛を深めていく。しかし、ついにギャレットが手紙の件を知ってしまう日が来た……。

 テリーサか?亡くなった妻か?ギャレットの心は揺れ動く。
 慌しいシカゴの都会とノースカロライナの静かで美しい田舎の海との対比。
 最終的には「悲恋」に終わるところもハリウッド的でない良さ。

 ハッピーエンドを期待した観客を裏切るような、一種のどんでん返し。ネタばれになるのでストーリーはここまで。
 
  息子想いのやさしい父親に名優ポール・ニューマンが好演。
 人もほとんど見かけない田舎の海を舞台にした親子の交流がしみじみとした味を醸し出している。

(水上 眞琴)
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by mako0491 | 2013-11-09 03:46 | 名品発掘

赤線基地

2013.10.11掲載分 名品発掘 

 
 悪女役の根岸明美が最後は・・・

 赤線と言う言葉は、若い世代には死語になりつつあるのかもしれない。
 
 売春を目的の特殊飲食街で、警察などの地図に赤線で記されていたことからそう呼ばれた。昭和33年には廃止されている。
 
 その「赤線」と「基地」を一つの言葉にした映画作りは見事と言える内容だ。谷口千吉監督の冴えた演出が見物である。
 
 1953年の作品で、米軍基地問題を、その影響下で生きる人々の目線で描いた作品であり、反米的なテーマのために一時上映見送りとなったほど。

 主役男優は三国連太郎で、相手役の悪女と言ってもいい役の根岸明美が魅了する。米国進駐軍GI相手の女由岐子を演じる。e0171960_14154217.jpg
 
 日劇ダンシングチーム出身で、映画「アナタハン」のオーディションで抜擢されて、主役を務め注目される。166cmと大柄で豊満でありながらも引き締まった肢体で人気を集めた。
 
 しかし肉体派女優と見られることを嫌って、演技を磨き、黒澤明監督の「赤ひげ「どですかでん」にも出演するなど、演技もできる妖艶な魅力を持った個性派女優だった。

 赤線基地の大まかなストーリーはーー。
 
 10年ぶりに旧満州から帰還してきた三国の役の主人公浩一は、懐しい故郷、富士山麓御殿場の変り果てた姿に驚いた。土地は射撃場に接収され、生活に困窮して部屋の離れをGI相手の女(根岸が演じる)に貸してあった。
 
 彼は10年間思い続けてきた恋人ハルエの消息を聞きただすが、皆言葉を濁して答えなかった。

 最終的に、昔の恋人の変わり果てた姿と、農業以外に仕事がないことから、東京に行く決心をする主人公。

 そして、「真面目になるから」一緒に連れて行ってくれとしがつく由岐子を、浩一はふりきるように引き離した。しかし、バスの中には、うって変った地味な身なりの由岐子が乗りこんできた。浩一は話しかけようとするが、その時響き出した砲声に妨げられた。
 
 秀麗な富士を包んで轟く砲声が何時止むともなく続く中を、無言の浩一と由岐子を乗せてバスは駅へ向つて走って行った。

 赤線と言えば名匠溝口健二の吉原の女たちを描いた「赤線地帯」が有名。どちらかと言えば生々しい女たちの姿を描をリアルに描いていたが、社会的視点は弱かった。
 
 谷口作品は、今でも基地問題を抱える我が国の姿を、すでに半世紀以上前に先取り、活写していたという意味で名作に数えられるのではないか。

                       (淡 美輪)
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by mako0491 | 2013-10-16 14:17 | 名品発掘

若尾文子の凄艶


愛の激情の行きつく先は

   映画「妻は告白する」

 あなたは登山にでかけます。夫とあなたと、あなたが好意を寄せている人と3人です。崖が崩れ、夫の命綱を切断しなければ、3人とも死んでしまいます。切断をしたら、夫は死に、あなたとあなたが好きな人は助かります。その代わりに、殺人罪に問われるかも知れません―――

 「あなたならどうする?」
 一つの事件をきっかけに、男と女の愛を突き詰めた逸品があります。1961年に作られた「妻は告白する」。増村保造監督。出演は若尾文子・川口浩・馬淵晴子。原作は、弁護士であり登山家でもある円山雅也の「遭難・ある夫妻の場合」。
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 若尾文子=写真=は建築家黒川紀章(故人)の妻で今もその美しさを保っています。女性の持つ妖しさや狂気を、若尾文子が見事なまでに演じていて、雨水を滴らせながら和服で佇む姿は圧巻です。古い白黒作品ですが、今見ても充分に楽しめる映画です。
 
 原作者が弁護士のため、法廷の場面がよく出てきます。山での遭難を題材に法廷で争う映画は、他にも「氷壁」があります。日本一の美人と言われた山本富士子出演、井上靖が原作。実際に起こったナイロンザイルの切断という社会的事件をもとに、友情と恋愛の確執を、「山」という自然と都会とを照らし合わせて描いたものです。

 ともあれ、女の愛と男の愛の違いは、古今東西、人類全てが感じることで、その溝は永遠に埋まることはないでしょう。だからこそ人類はこれまで繁栄・発展・進化してきたと渡辺淳一は言います。    

 若尾文子が好意を寄せる青年(川口浩)の婚約者、馬淵晴子に言わしめているのは「女は愛が全て。好きな人が血を流し、苦しむ姿を見て、思わずザイルを切ってしまったのよ」。
 ある意味女の本質をついた言葉なのかも知れません。

                                 (中村 聖代)
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by mako0491 | 2013-07-30 14:18 | 名品発掘
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   アル・パチーノの「男の世界」


 アル・パチーノは、アメリカを代表する名優ですよね。でも私的には、ダスティン・ホフマンとよく似た風貌に思え、どちらがどっちなのかわからない時期がありました。 

 ダスティン・ホフマンと言えば「卒業」。アル・パチーノはと言うと「ゴッドファーザー」がすぐに連想されるくらい(映画にそれほど詳しくない女性にも)浸透していると思います。が、今回たまたま観た映画「カリートの道」(1993年)は、それほど知られていない作品のようです。

 愛する女性のために足を洗おうと働くアル・パチーノ。バハマでレンタカー屋を営むことを夢見てお金を貯める毎日でしたが、30年の刑期を5年で出所させてくれた弁護士の頼みを断り切れず、事件に巻き込まれてしまいます。
 
 この弁護士は、マドンナの元夫ショーン・ぺン。「アイ・アム・サム」で知的障害を持つ父親役をみごとに演じた彼だったとは、キャストを見るまでは全く分かりませんでした。

 彼女(ペネロープ・アン・ミラー)が止めるにもかかわらず、弁護士の手伝いに行くアル・パチーノ。日本の任侠と同じ義理と人情なのでしょう。

 いくらやくざを抜けようとしても周りがそれを許さない話は数多くありますよね。そんな「男の世界」は私たち女性には理解できないし、したくない話です。

 映画にでてくる曲のいくつかは、応年ディスコでよくかかっていた馴染みのある曲だったのが懐かしかったな。
                                (中村 聖代)
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by mako0491 | 2013-03-18 10:41 | 名品発掘

名品発掘2月1日付け

「秋津温泉でメロドラマ楽しむ」
 吉田喜重監督の実存的メロドラマ


映画や芝居、オペラなどそれほど有名でないが味のある名品を発掘、その背景や現代的意義について考えてみよう(随時掲載します)。

大島渚監督が亡くなった。当時の松竹新進監督たちは和製ヌーベルバークともいわれ、一世を風靡した。
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その一人吉田喜重監督の作品に「秋津温泉」=写真=がある。新子役の岡田茉莉子と、周作役の長門裕之との絡みが生々しく迫ってくる。

昭和20年、東京の学生だった周作は、岡山県山中の秋津温泉に流れ着いた。そこで、秋津荘の一人娘、新子と出会う。病に体を蝕まれていた周作は生きる希望を失っていたが、彼女の快活さに打たれ、生きる力を取り戻す。

しかし、何年か経って、再び秋津荘を訪れた彼はすっかり自堕落な男になっていた。
新子に「一緒に死んでくれ!」と訴える。周作の愛を確かめた新子は、彼の願いを受け入れ、一緒に川原に向かったのだがーー。

まずこの作品、メロドラマの楽しさを味わさせてくれる。美しい岡田茉莉子は見飽きない。ワンカットごと表情が豊かに変わり、女の性(さが)の切なさを見事に演じる。

メロドラマは、普通言われるような荒唐無稽な感傷的見せ物ではないという説がある。イギリス人学者、ピーター・ブルックスの『メロドラマ的想像力』(1976年)という小説論では、バルザックやディケンズなど19世紀の小説をメロドラマ的な想像力として見直そうというもの。まさにこの映画などその類に入れられよう。

その他の作品「ろくでなし」「告白的女優論」「嵐が丘」などもお勧めだ。

吉田は同じ松竹ヌーベルバークと並び称された大島とは映画に対する考え方において相容れなかったようだ。お互いの作品をほとんど見ようとしなかった、と追悼文に書いている。

ただ「メロドラマ的想像力」という点では、吉田が軟派のメロドラマなら、大島は硬派のメロドラマを体現していたのでないだろうか。
           (淡 美輪)
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by mako0491 | 2013-02-05 13:48 | 名品発掘