わかやま新報女性面 (隔週金曜日)記事を発信-NPO法人「和歌山コミュニティ情報研究所」の女性スタッフが取材・編集を担当


by mako0491

カテゴリ:ミステリーの愉しみ( 10 )

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出自などの謎が全て明らかに 

 『燔祭の丘』
  篠田 真由美著  

   講談社 1320円  2011年

 『僕はーーヒトゴロシ』。謎の詩を残して姿を消した桜井京介は、久遠アレクセイの名に戻り、14歳まで育った屋敷にいた。一方、神代宗の話を聞いた蒼は、函館で京介を捜し歩き、20年前の忌まわしき事件を知る。次第に明らかとなる久遠家のルーツ。そして、父・グレゴリの狂気が京介を襲う!

 13作目の「一角獣(ユニコーン)の繭」の最後に失踪した桜井京介。その出自と宿命、運命そして謎等が全て明らかとともに、今まで謎のままになっていた事実が明らかになる完結編だ(15作)。

 そのため、建築探偵桜井京介の建築探偵と言われる建築が今回は登場しない。よく作者は作中人物が勝手に動き回り作者の予想もつかないような行動をとる、というような言い回しをするが、それはなにも作者だけに与えられたものではなく、読者も同じである。思い入れが強ければ強いほど妄想もして、あれこれ想像をしてしまう。
 
 であるならば、13作を読んできた読者は、完全に作中人物を好きになり、本当にその人物が近くに存在しているような錯覚を感じるようになる。

 そうなると、作者とは別に自分で作り上げてしまった作中人物をあらゆる面で想像、いや妄想する。作者に作中でそれを否定されることはとても辛いことなんだ。

 この完結編の「燔祭の丘」も作者としてはぜひ書かなければならないストーリーであり顛末であったと想像できる。桜井京介と云う人物を根底から覆すような辛い作業であってもだ。
 
 コアな本格ファンはご存知だと思うが、「建築探偵桜井京介の事件簿」は1994年「未明の家」が始まりで、以降15作品で完結。ただ惜しむらくは、15作品中これがNO,1だと言い切れる作品がない。どれもが標準点だと思うが、わたしとしては、そこが唯一の不満である。
デビュー3作目にあたり、シリーズ第1作から18年。桜井京介の復活の芽はあると思うが、どうなるのか注目している。

 今回が最終回です。このコーナーに読後感想を書かせていただけるなんて信じられないまま、今日まできました。読んでいただきありがとうございました。
                          (阪井 俊夫)


 
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by mako0491 | 2013-05-01 17:27 | ミステリーの愉しみ

3月29日掲載

 

 
 『龍の寺の晒し首』  
     小島 正樹著  

   南雲堂 1890円 

       2011年
 
 「群馬県北部の寒村、首ノ原。村の名家神月家の長女、彩が結婚式の前日に首を切られて殺害され、首は近くの寺に置かれていた。 その後、彩の幼なじみが次々と殺害される連続殺人事件へ発展していく。e0171960_042574.jpg

  僻地の交番勤務を望みながら度重なる不運(?)にみまわれ、県警捜査一課の刑事となった浜中康平と彩の祖母、一乃から事件の解決を依頼された脱力系名探偵・海老原浩一の二人が捜査を進めていくが・・・

 プロローグの謎(この謎に一番興味があった)
牛頭・馬頭の馬頭が出現。
馬頭人身の怪物・・・・・

 牛頭・馬頭は昔「子連れ狼」で知っておりました。
 六道輪廻の冥府魔道に生きる拝一刀・大五郎。そこで暗殺を請け負う目印に使われていたのが、牛頭・馬頭の道中陣。

 謎は数え切れないくらいあり、どの様に名探偵海老原浩一が論理的に解明するのか?そこが、非常に楽しみでした。?というところもありましたが、些細な事で面白ければ全てOKなのだ!

  ただ今回も盛り沢山の謎があり、論理的に解決はされるが、もう少し謎を減らして一つ一つを重厚な謎にできないものかと思う。でもそれが小島正樹だと言われればそれもそうだと言わざるを得ない。
そして、今回は感情移入するヒロインもなく、それにより憤慨することも無かった。首を晒すわけですから、切断がありますがその描写は、グロくも無くよかったのではないでしょうか。

小島正樹は島田荘司との共著「天に還る船」(2005年)で作家デビュー。その三年後、2008年に「十三回忌」で単独のデビューを果たしたのだが、その作風はやりすぎ、詰め込みすぎと言われるほどのトリックの満載である。
 
 ミステリーのトリックなんか思い浮かばない私なんかは、次の作品のために少しくらい残しておけば良いのにと思うほどだ。
 
 作品としては海老原浩一シリーズ6作品(共著を含む)那珂邦彦シリーズが3作品と快調に作品を発表して、本格ミステリの中で独自の世界を確立しつつある。

                                     (阪井 俊夫)




 
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by mako0491 | 2013-03-18 00:43 | ミステリーの愉しみ

監獄島

 
3月1日掲載



 『監獄島(上、下)』
  加賀美 雅之著  

   光文社 1300円 
      2004年

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 刑務所で内で大がかりな陰謀が進行しているとの内部告発で、パリ警察が誇る名予審判事シャルル・ベルトランはタントワーヌ刑務所を訪れた。そこは長期刑の服役者だけを集めた断崖に囲まれた脱出不可能な監獄島だった。
 
 そこで起こる不可能犯罪。閉ざされた部屋での殺人。時計塔から吊り下げられた火だるまの絞殺死体。斧でバラバラにされた死体。血で彩られた独房。ギロチンで切断された胴体。そして最後の大ドンデン返し。これでもかの謎が充満して本格の読者を満足させる。

 上下巻で原稿用紙2400枚の大長編。大長編の好きなわたしには、応えられませんませんでした。
 パリ警察予審判事のシャルル・ベルトランを探偵役に据えていますが、アンリ・バンコランにそっくりだそうです。わたしは外国推理は読まないので知りませんが、そうなのだそうです。
 
 監獄島は、小島正樹さん(次回掲載予定の本格の新旗手)のキャッチコピーの「やりすぎ」並みの謎の連続です。
 第一の惨劇の「オルランジェ館の死」から第九の惨劇「最後の惨劇」まで、九つ。凄まじい勢いで起こる殺人劇に、手に汗を握って読ませていただきました。
 
 面白かったのですが、唯一つ理解できない箇所がありました。殺人方法ではなく、死体を下に下ろす描写です。孤島から10m離れた所に「蝋燭岩」と呼ばれる、先のとがったまるで蝋燭のような岩に死体が串刺しになっている。これを降ろす方法が「こんな事がで、できるのか」との疑問がおこりました。詳しく知りたい方は、是非読んでみてください。でもそんな事は瑣末なことです。
 
 そして、最後の大どんでん返し!!これは想像もしていませんでしたので、ビックリしたのは云うまでもありません。

  加賀美雅之は2002年に『双月城の惨劇』で二階堂黎人の推薦を受けデビュー。二階堂は解説の中で『自分の人狼城の恐怖という作品を、まったくの赤の他人という立場から読んでみたかったという願望がある・・・ 双月城の惨劇で満足させられた』と賛辞を送っている。
 まだ長編3作品と短編集1作品しか出版されていないが、本格ファンを唸らせてくれる作品をこれからも書いて欲しいと切に願う。
                            (阪井 俊夫)
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by mako0491 | 2013-03-05 15:35 | ミステリーの愉しみ

建築士探偵が活躍

 
10月19日掲載
 『浮遊封館』
  門前 典之著  

   原 書房 1890円   2008年

過去に起こった。
①旅客機墜落事故ーしかし乗客130名の遺体が消失。
②謎の宗教団体の信者消失事件。
③身元不明者の遺体消失事件。
現在に起こる。
①雪密室事件。
その裏で暗躍する謎の教団「奇蹟の光」

 過去、現在のそれらの事件が一つに繋がり全貌が明らかになる。
 時にグロテスクに、時に猟奇的に、そして論理的に解明された驚愕の真実に驚愕する、本格ミステリのファンには堪らない一冊だ。
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 探偵は蜘蛛手建築士。看板には「蜘蛛手建築事務所」の吹き出しに「及び探偵」とある。容貌、正確な年齢、名前は書かれていない。
 ワトソンは宮村。30代のK大の学生。容貌、正確な年齢、名前は書かれていない。
 
 このコンビはキャラとしては、島田荘司の御手洗潔と石岡和己を彷彿とさせ、わたし的には大歓迎であるのは云うまでもない。宮村は石岡が御手洗に顎で使われるのように、蜘蛛手に扱き使われる。よくここまで似せて書いたなあと思う。でも好きです!!御手洗潔症候群の方はどうぞお読みください。少しは病が癒えるかも?

  この作品はシリーズ2作目で探偵、蜘蛛手の詳細が分からずもどかしい思いをしたが、3冊目の「屍の命題」で経歴が分かり、胸のつかえが下りました。蜘蛛手啓司 33歳、一級建築士。建築士探偵なのだ。篠田真由美の桜井京介は建築家探偵でこちらは建築士探偵。
 
 門前典之は1997年に「唖吼の輪廻」(あくのりんね)(後に「屍の命題」に改題出版)で第7回鮎川哲也賞最終候補になり、「建築資材」で第11回鮎川哲也賞を受賞。
 当時の選考委員は鮎川哲也、島田荘司、笠井潔の本格の鬼の3名。   
 
 門前典之は現在まで長編は「建築資材」「浮遊封館」「屍の命題」「灰王家の怪人」4作品を出版。いずれも一級建築士の知識を応用した本格ミステリーだ。
 
  4作品のうち3作が蜘蛛手シリーズで、とても面白い本格を読めたと保証できる作品だ。
 本格には猟奇的な作品が多くて気分を害する方も多いが、それが本格の本格たる所以である。
 今回から新しい本格の旗手を3名ご紹介します。是非その著作を読んでいただきたいと切に願う。

                                               (阪井 俊夫)
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by mako0491 | 2012-10-18 14:28 | ミステリーの愉しみ

倒述ミステリーの分野

 

女探偵「碓氷優佳」は切れ者

 『扉は閉ざされたまま』
  石持 浅海著  

 
NON NOVEL 880円 
2005年
 
 大学在学中に所属していた軽音楽部の有志、別名「アル中分科会」が卒業以来はじめての同窓会をやろうと集まった六人と碓氷優佳。

 探偵役の碓氷優佳は大倉(旧姓碓氷)礼子の妹でその頭脳明晰さでメンバーから一目置かれ、同窓会にも参加するようになっていた。

 一方、犯人の伏見亮輔はある理由からメンバーの後輩である新山和宏を殺害。そして遺体発見を遅らせるために新山の部屋の扉を開けさせないように、あらゆる手段を用いる。だが碓氷優佳だけがその様子に不信を抱き、伏見亮輔に疑惑の目を向け追い詰めていく。
 
 かくして犯人、伏見亮輔と探偵、碓氷優佳の知恵比べが始まる。余談だが、碓氷優佳は伏見亮輔に告白をしたことがある。
 
 倒叙ミステリーで最初に犯人がわかるので、最初に犯人名も挙げた。探偵がどうして犯人を追い詰めていくのかが醍醐味のサスペンス風のミステリーだ。倒叙ミステリーは好きではないのだが、これは面白かった。
 2005年は同じく倒叙ミステリーの「容疑者Xの献身」があり、年間の1,2位を争ったのだが、わたし的には2位だったこの「扉は閉ざされたまま」の方が好だ。ガリレオ湯川学より碓氷優佳の方が好きだと云うことになるのだろう。

  この時に巻き起こったのが倒叙ミステリーは本格ミステリーかどうかである。ここで詳しく述べないが、知りたければPCで検索をして欲しい。わたし的には本格ミステリーは最初に幻想的(奇妙)な謎があり、それを探偵が論理的に齟齬がなく推理をして犯人をあげる、というのが本格だと思っている。この考えは変わらない。
 
 碓氷優佳を探偵にした2作目の「君の望む死に方」も非常に面白い。興味ある方はご一読を・・・。碓氷優佳シリーズはまだ出版されるとのことで楽しみにしている。ただし、現実に碓氷優佳の様な女性がいたらお近づきにはなりたくない。全てを見透かされているようで怖い。ただ見ているだけで良い。

  西之園萌絵、瀬在丸紅子、二階堂蘭子と好きな女性探偵の中にもう一人碓氷優佳が入り4人となった。あと1人位は増やしたいものだ。

 石持浅海の著作はサスペンスに溢れスピーディであり緻密だ。願わくばわたしの思う「本格」を書いて欲しい。
                    
                                                 (阪井 俊夫)


 
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by mako0491 | 2012-09-18 16:35 | ミステリーの愉しみ

ミステリー

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 魍魎の匣
  京極 夏彦著 
 

 講談社ノベルス 1200円 
 1995年

 楠本頼子は柚木加菜子が好きだった。加菜子はクラスの誰よりも聡明で、気高く、美しく、一人だけ違う匂いを発していた。まるでけものの中に一人だけ人が混じっているようだった。

 そんな彼女がクラスの中で唯一自分だけと親しく接してくれることが、たまらなく嬉しかった。そんな二人が親交を深めたある日、湖を見に行こうと出かけた駅のプラットホームで、何者かに突き落とされた柚木加菜子は重傷を負い、美馬坂近代医学研究所に運ばれる。
 
 それと並行するように「武蔵野連続バラバラ殺人事件」と「穢れ封じ御筥様事件」が起こる。一見、なんの繋がりもない事件が最後に繋がり、事件の全貌が明らかになる。

  京極夏彦の著作を最初に見たときの衝撃は今も鮮明に覚えている。おどろおどろしい「百鬼夜行」の絵のカバーが鮮烈で、読んだ中身も鮮烈で、あーこの人は言霊使いだと思った。大長編が好きなわたしも読みこなすのに時間を要した。
 
 主人公の京極堂(中善寺秋彦)は古書店を営む憑き物落とし。捜査をしないで事件を観るアホ探偵榎木津、ゲタ顔の熱血刑事の木場修、欝(うつ)を患う作家関口などレギュラー出演者に限らず、一人ひとりのキャラがもの凄くよく書けている。
 
 各人のセリフも良く、特に京極堂の「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」。これはデビュー作の「姑獲鳥の夏」で吐かれたセリフだが、わたしはこのセリフが大好きです。
 そして先にも触れたが、縦糸と横糸が絡み合うように張られた伏線が、収束に向かいその伏線の解明に齟齬(そご)がなく完結。見事である。
 
 「魍魎の匣(はこ)」と双璧なのが「塗り仏の宴」で、この作品以上に絡み合った展開を描いている。
 頭の硬いわたしは、一読では不明な箇所が多く、「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」「塗り仏の宴」は三度読みました。でもまだ全てが解っていない。
 
 ちなみに「獲鳥の夏」と「魍魎の匣」は映画化されましたが、ヒットはしなかった。「魍魎の匣」は是非とも観たかったのだが、行ける日にはもう終わっていた。DVDになってから観た。感想は、あれだけの膨大な小説を映画化するのは無理だと痛感。原作には勝てない。
     
                                   (阪井 俊夫)
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by mako0491 | 2012-08-21 11:57 | ミステリーの愉しみ

装飾的な死、驚きの結末



7月20日掲載

ミステリーの愉しみ



 『霧越邸殺人事件』
  綾辻 行人著  

新潮文庫 935円 
1990年

 霧越邸殺人事件ーある晩秋、信州の山深き地で猛吹雪に遭遇した8人の前に突如出現した洋館「霧越邸」。助かった…安堵の声も束の間、外界との連絡が途絶えた邸で、彼らの身にデコラティブな死が次々と訪れる。

 密室と化したアール・ヌーヴォー調の豪奢な洋館。謎めたい住人たち。ひとり、またひとり―不可思議極まりない状況で起こる連続殺人の犯人は。驚がくの結末が待っていた。

 霧越邸に引き寄せられるように集まった劇団「暗色天幕」のメンバー7人とその友人と医師。そしてそこに住む不思議な住人。登場人物が揃い霧越邸での見立て殺人の幕が上がる。
 
 冒頭にーもう一人の中村青司氏に捧ぐーとあるように、綾辻行人は「館シリーズ」と呼ばれるシリーズを今まで9作品書いている。これはそのシリーズとは全く関係のない著作だが、あえて「もう一人のー」とうたっている。
 

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 さて綾辻行人は1987年「十角館の殺人」でデビュー。この「十角館の殺人」は乱歩賞に応募したそうだが、最初の選考で落選したそうである。 

 乱歩賞に応募したことはあまり知られていない話かもしれないが、わたしは直接、関係者から聞いたので本当の話だ。それもけちょんけちょんに貶(おとしめ)られ、無視されたようだ。

 で、落選はしたが出版され今までシリーズ化されて続いているという事は、乱歩賞の選考委員に見る目が無かったと言われても仕方のないことだ。
 
 さて「館シリーズ」9作品で一番好きなのは5作目の「時計館の殺人」で、このトリックは一言で言えるが、秀逸だと思う。ここで取り上げるのを「霧越邸」とどちらにしようか随分迷った。そして「館シリーズ」の探偵は島田 潔で後に島田荘司の島田と御手洗潔の潔をとり「島田 潔」としたと語っている。そしてその安直さを反省。現在はそれをアナグラムにした鹿谷門実を探偵としている。

  綾辻行人の奥さんはホラーで有名な小野不由美だが、もともと綾辻行人もホラー物が得意のジャンルだというのは知る人ぞ知る有名な話だ。

 本格+ホラーを否定はしませんが、「館シリーズ」での使用はしないでくださいね。コアな本格ミステリー命のファンの一人としてのお願いです。
                                              (阪井 俊夫)
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by mako0491 | 2012-07-24 16:59 | ミステリーの愉しみ

霧越邸殺人事件

 
7月20日掲載

ミステリーの愉しみ

P付き

 『霧越邸殺人事件』
  綾辻行人著  

新潮文庫 935円 
1990年

 霧越邸殺人事件ー或る晩秋、信州の山深き地で猛吹雪に遭遇した8人の前に突如出現した洋館「霧越邸」。助かった…安堵の声も束の間、外界との連絡が途絶えた邸で、彼らの身にデコラティブな死が次々と訪れる。
密室と化したアール・ヌーヴォー調の豪奢な洋館。謎めたい住人たち。ひとり、またひとり―不可思議極まりない状況で起こる連続殺人の犯人は。驚愕の結末が待っていた。
 霧越邸に引き寄せられるように集まった劇団「暗色天幕」のメンバー7人とその友人と医師。そしてそこに住む不思議な住人。登場人物が揃い霧越邸での見立て殺人の幕が上がる。
 冒頭にーもう一人の中村青司氏に捧ぐーとあるように、綾辻行人は「館シリーズ」と呼ばれるシリーズを今まで9作品書いている。これはそのシリーズとは全く関係のない著作だが、あえて「もう一人のー」と謳っている。
 さて綾辻行人は1987年「十角館の殺人」でデビュー。この「十角館の殺人」は乱歩賞に応募したそうだが、最初の選考で落選したそうである。 
乱歩賞に応募したことはあまり知られていない話かもしれないが、わたしは直接、関係者から聞いたので本当の話だ。それもけちょんけちょんに貶され無視されたようだ。
で、落選はしたが出版され今までシリーズ化されて続いていると云う事は、乱歩賞の選考委員に見る目が無かったと云われても仕方のないことだ。
 さて「館シリーズ」9作品で一番好きなのは5作目の「時計館の殺人」で、このトリックは一言で云えるが、秀逸だと思う。ここで取り上げるのを「霧越邸」とどちらにしようか随分迷った。そして「館シリーズ」の探偵は島田 潔で後に島田荘司の島田と御手洗潔の潔をとり「島田 潔」としたと語っている。そしてその安直さを反省。現在はそれをアナグラムにした鹿谷門実を探偵としている。
 綾辻行人の奥さんはホラーで有名な小野不由美だが、もともと綾辻行人もホラー物が得意のジャンルだというのは知る人ぞ知る有名な話だ。
本格+ホラーを否定はしませんが、「館シリーズ」での使用はしないでくださいね。コアな本格ミステリー命のファンの一人としてのお願いです。
     (阪井 俊夫)
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by mako0491 | 2012-07-10 15:15 | ミステリーの愉しみ

封印再度ー森 博嗣著

 


『封印再度』 
  森 博嗣著  

講談社文庫 820円 
1997年

 岐阜県恵那市の旧家、香山家には代々伝わる家宝があった。その名は、「天地の瓢(こひょう)」と「無我の匣」。

 「無我の匣」には鍵がかけられており、「天地の瓢(こひょう)」には鍵が入っている。
ただし、鍵は「瓢」の口よりも大きく、取り出すことが出来ないのだ。
50年前の香山家の当主は、鍵を「瓢」の中にいれ、息子に残して自殺したという。
果たして、「匣」を開けることが出来るのか?

 興味を持って香山家を訪れた西之園萌絵だが、そこにはさらに不思議な事件が待ち受けていた!
わたしには密室殺人より「天地の瓢(こひょう)」と「無我の匣」の謎がとても強烈で、ずいぶん考えました。この謎は専門的な知識が必要で、実験をされた方がいて、このことを証明されたと知り、ビックリしたのは最近のことです。 

 ネタバレになるのでこれ以上は書けません。が、一級品の本格で、N大助教授 犀川と萌絵の恋が大きく転換するのも本作の魅力の一つで、存分に味わうことが出来る。
森 博嗣は「すべてがFになる」で第一回のメフィスト賞を受賞。このエピソードが面白いのだが書くスペースがないのが歯がゆい。知りたい方はウィキペディアでどうぞ。

 これはS&Mシリーズと云われ、10作品があり「封印再度」はシリーズ5作目となる。わたし的にはこれと「笑わない数学者」が一番好きだ。

 森博嗣の作品のほとんどが密室物で、自身がN大工学部助教授なので、理系のミステリーと呼ばれる。S&Mシリーズの他に瀬在丸紅子が探偵として活躍するVシリーズが10作品ある。その他のシリーズもこのS&Mシリーズを基幹として派生してリンクをしている。全てを読むことにより森ワールドを満喫できる。瀬在丸紅子の物語は20年ほど前の物語だが、犀川と萌絵には瀬在丸紅子の存在は大きく、深く関わってくる。そのためVシリーズは重要なシリーズなのだ。
 
 女性探偵は日本では少ないと思っているが(海外は知らない)わたしの好きな女性探偵1位はフランス人形のような瀬在丸紅子。2位は可愛いお嬢様西之園萌絵。3位はクールな美人の二階堂蘭子だ。
 
森博嗣は考えている長編を書き終えたら引退をすると明言した。今は新作が出ない。もうミステリーを書いてくれないのか?すこぶる残念だ!
     (阪井 俊夫)
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by mako0491 | 2012-06-26 12:12 | ミステリーの愉しみ

ミステリーの愉しみ

 
6月22日掲載

ミステリーの愉しみ



『封印再度』 
  森 博嗣著  

講談社文庫 820円 
1997年

 岐阜県恵那市の旧家、香山家には代々伝わる家宝があった。その名は、「天地の瓢(こひょう)」と「無我の匣」。

 「無我の匣」には鍵がかけられており、「天地の瓢(こひょう)」には鍵が入っている。
ただし、鍵は「瓢」の口よりも大きく、取り出すことが出来ないのだ。
50年前の香山家の当主は、鍵を「瓢」の中にいれ、息子に残して自殺したという。
果たして、「匣」を開けることが出来るのか?興味を持って香山家を訪れた西之園萌絵だが、そこにはさらに不思議な事件が待ち受けていた!

わたしには密室殺人より「天地の瓢(こひょう)」と「無我の匣」の謎がとても強烈で、ずいぶん考えました。この謎は専門的な知識が必要で、実験をされた方がいて、このことを証明されたと知り、ビックリしたのは最近のことです。 

 ネタバレになるのでこれ以上は書けません。が、一級品の本格で、N大助教授 犀川と萌絵の恋が大きく転換するのも本作の魅力の一つで、存分に味わうことが出来る。

 森 博嗣は「すべてがFになる」で第一回のメフィスト賞を受賞。このエピソードが面白いのだが書くスペースがないのが歯がゆい。知りたい方はウィキペディアでどうぞ。
これはS&Mシリーズと云われ、10作品があり「封印再度」はシリーズ5作目となる。わたし的にはこれと「笑わない数学者」が一番好きだ。

 森博嗣の作品のほとんどが密室物で、自身がN大工学部助教授なので、理系のミステリーと呼ばれる。S&Mシリーズの他に瀬在丸紅子が探偵として活躍するVシリーズが10作品ある。その他のシリーズもこのS&Mシリーズを基幹として派生してリンクをしている。全てを読むことにより森ワールドを満喫できる。瀬在丸紅子の物語は20年ほど前の物語だが、犀川と萌絵には瀬在丸紅子の存在は大きく、深く関わってくる。そのためVシリーズは重要なシリーズなのだ。
 
 女性探偵は日本では少ないと思っているが(海外は知らない)わたしの好きな女性探偵1位はフランス人形のような瀬在丸紅子。2位は可愛いお嬢様西之園萌絵。3位はクールな美人の二階堂蘭子だ。
 森博嗣は考えている長編を書き終えたら引退をすると明言した。今は新作が出ない。もうミステリーを書いてくれないのか?すこぶる残念だ!
     (阪井 俊夫)
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by mako0491 | 2012-06-07 18:20 | ミステリーの愉しみ