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わかやま新報女性面 (月一回金曜日)記事を発信-NPO法人「和歌山コミュニティ情報研究所」の女性スタッフが取材・編集を担当


by mako0491

にこにこ農園

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親子で自給自足体験 食育プロジェクト好評
 紀伊地区で無農薬栽培と販売をする吉川誠人さんと奥さんの幸子さんの二人は「にこにこ農園」―野菜を食べた人・遊びに来た人が笑顔になるようにと名付けた―を運営している。そんな中、月に1回「親子で自給自足体験! 食育プロジェクト!」と題したイベントを開催し、昨年、和歌山市の「わかやまの底力・市民提案実施事業」の優秀企画に選ばれた。現地を訪れて、第6次産業化(別枠参照)をめざした活動を聞いてみた。
                                                  (中村 聖代)

 【インドで出会った】
 吉川誠人さんは、和歌山市で生まれ、ずっと陸上競技をしていた(紀之川中学在学中、陸上競技の走高跳で194㎝の記録を出した。それは現在も県中学生記録)。福岡大学体育学部に進学し、「何でも見てやろう」と海外を放浪。卒業後も国内外を旅しながら、アルバイトをしたり、農業を学んだりしていた。
  
 一方、幸子さんは、幼い時の農業体験(牧場のファームスティ)が基になって、八ヶ岳中央農業実践大学校研究科を卒業。その後タイの農村でボランティア活動をしていた―海外で定住したいと単純に考えたからだと言う。
 「あまり日本と変わらないな。もっと刺激が欲しい」と、日本に戻ってきて仕事に就いたが、それが自分のやりたいことであるはずもなく、それからアジアの国々を旅している時、インドで誠人さんに出会ったのだ。

 【自給自足の生活】
 幸子さんは愛知県豊田市出身。結婚後暫くは、別々の場所で農法の勉強をしたりした後、自給自足の生活をすべく、熊野市に移り住んだ。
 子供が産まれたこともあって、誠人さんは小学校の講師を2年間勤めたが、和歌山市の実家に戻ることと、土地を見つけたことなどが重なり、今までのような片手間ではなく、「農業を中心とした生活」をしようと二人同時に考え、2005年に農園を開園したのだった。

 【無農薬・合鴨農法】
 最初から農薬は使わないと決めていた。自分が食べるのが目的だったので、農薬は使いたくなかった。うまくいかないで失敗もした。
 「何かが間違っていると、植えたものが、消えてしまうのです」。こ のままやっていけるのだろうか?と不安になったこともあった。もう限界―という状態は超したという。
 「試行錯誤を繰り返し、段々上手になってきました」。「大事なことは自然が教えてくれるのです」。

 農業を通じて自然に興味を持ってもらおうと、いつも野菜を買ってくれる客や知人ら内々で親子体験イベントを開いていたが、好評なので毎月一回開催している。
 畑で採れたえんどう豆でコロッケを作ったり、ヤギ小屋作りや種まき・家畜との触れ合いを体験する。すぐに予約でいっぱいになる。

 【ネットで通信販売】
 4、5年前からインターネットで野菜の販売もしている。口コミが多いが、昨今は「検索」して新しい客も購入する。東京から訪ねてくる客や電話で長話する客もいる。

 「イベントなどは特にボランティアの人たちに助けてもらってやっている状態なので、常時手伝ってくれる方にお給料を払える状態までになればと思っています」。

 【いつも描いている絵】
 「昔から、こんな農場ならいいね、とかこんな暮らしをしたら楽しいねとか言いながら、その時々に絵を描いていました」。
 合鴨のひなを田に放したり、ヤギや豚や鶏を飼ったりといった絵を描いていた幸子さん。少しづつではあるが、実現している。
 
 「今のままのスタイルでは採算が採りづらい。かといって農薬を使うとか何かに特化した農業は、やりたくない」と誠人さん。作りすぎた野菜などは家畜の餌やたい肥に使っている。野生のイノシシなどがたくさんいる。
 ゆくゆくはこうしたものを使って、ここで農家レストランを開き、ひきこもりの人たちはじめ多くのひとが働ける場所にしたいと考えている。

 【今後の展望と課題】
 政府は今年度、45歳未満で地域農業の中心的な担い手になる新規就農者に最長5年間、技能研修に最長2年間、年150万円を給付する制度を創設した。
 都市農業への期待は高く、遊休化している農地を減少させるべく、各自治体も様々な就農支援を始めている。
 和歌山県では「JAトレーニングファーム」事業を今年度開始した。農業をとりまく環境は厳しいが、6次産業化することで光が見えてくるのではないだろうか。

 <第6次産業とは>
 ・農業:第一次産業の「1」、加工:第二次産業の「2」、流通:第三次産業の「3」の数字を使って、1+2+3=6(1×2×3=6)で出来た「第6次産業」という造語。
 ・第4次産業と第5次産業は、ない。

 ・今村奈良臣氏が唱えた「第6次産業化」とは、農業が農産物を生産するだけでなく、それを加工し販売するところまで視野に入れた事業展開をすることにより、農業者が多くの利益に関われる仕組みを作ろうという考え方。例えば、農業のブランド化、消費者への直接販売、レストランの経営など。

 第一次産業に付加価値をつけて高度化を目指すという観点では、1.5次産業化に類似しているが、6次産業は加工、流通を複合化させるという視点がより明確である。各次の産業の連携による農村の活性化や、農業経営体の経営の多角化のキーワードとして提唱される。
by mako0491 | 2012-08-21 10:53 | アタマ記事