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わかやま新報女性面 (月一回金曜日)記事を発信-NPO法人「和歌山コミュニティ情報研究所」の女性スタッフが取材・編集を担当


by mako0491

霧越邸殺人事件

 
7月20日掲載

ミステリーの愉しみ

P付き

 『霧越邸殺人事件』
  綾辻行人著  

新潮文庫 935円 
1990年

 霧越邸殺人事件ー或る晩秋、信州の山深き地で猛吹雪に遭遇した8人の前に突如出現した洋館「霧越邸」。助かった…安堵の声も束の間、外界との連絡が途絶えた邸で、彼らの身にデコラティブな死が次々と訪れる。
密室と化したアール・ヌーヴォー調の豪奢な洋館。謎めたい住人たち。ひとり、またひとり―不可思議極まりない状況で起こる連続殺人の犯人は。驚愕の結末が待っていた。
 霧越邸に引き寄せられるように集まった劇団「暗色天幕」のメンバー7人とその友人と医師。そしてそこに住む不思議な住人。登場人物が揃い霧越邸での見立て殺人の幕が上がる。
 冒頭にーもう一人の中村青司氏に捧ぐーとあるように、綾辻行人は「館シリーズ」と呼ばれるシリーズを今まで9作品書いている。これはそのシリーズとは全く関係のない著作だが、あえて「もう一人のー」と謳っている。
 さて綾辻行人は1987年「十角館の殺人」でデビュー。この「十角館の殺人」は乱歩賞に応募したそうだが、最初の選考で落選したそうである。 
乱歩賞に応募したことはあまり知られていない話かもしれないが、わたしは直接、関係者から聞いたので本当の話だ。それもけちょんけちょんに貶され無視されたようだ。
で、落選はしたが出版され今までシリーズ化されて続いていると云う事は、乱歩賞の選考委員に見る目が無かったと云われても仕方のないことだ。
 さて「館シリーズ」9作品で一番好きなのは5作目の「時計館の殺人」で、このトリックは一言で云えるが、秀逸だと思う。ここで取り上げるのを「霧越邸」とどちらにしようか随分迷った。そして「館シリーズ」の探偵は島田 潔で後に島田荘司の島田と御手洗潔の潔をとり「島田 潔」としたと語っている。そしてその安直さを反省。現在はそれをアナグラムにした鹿谷門実を探偵としている。
 綾辻行人の奥さんはホラーで有名な小野不由美だが、もともと綾辻行人もホラー物が得意のジャンルだというのは知る人ぞ知る有名な話だ。
本格+ホラーを否定はしませんが、「館シリーズ」での使用はしないでくださいね。コアな本格ミステリー命のファンの一人としてのお願いです。
     (阪井 俊夫)
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by mako0491 | 2012-07-10 15:15 | ミステリーの愉しみ